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すみだの「みらい」を彩る人たち

1701interview_title 墨田区は、日本橋や浅草といった流通拠点に近接し、東京、日本、世界へ向けたものづくりの拠点として発展してきました。23区内では大田区、足立区に次いで3位の製造業の事業所数を誇ります。 輸入品が浸透し、衣類の国産比率は約3%という現在。今回は地場産業であるメリヤス製造に注目し、すみだのものづくりを継承するとともに、未来に向けた新しい取組みをしている企業の方々を紹介します。

Interview 1  久米繊維工業株式会社  取締役会長  久米 信行さん

久米繊維工業株式会社
日本でTシャツという呼び名が広く知られていない1950年代半ば、いち早くアウターTシャツを開発・生産しました。裁断から仕上げ、プリントまでを一貫して国内の会社で生産する、こだわりのTシャツメーカーです。
墨田区太平3丁目 http://kume.jp
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創業から時代を超えて イノベーションの歴史
久米繊維工業の創業は1935年。以来、度重なる情勢・経済の危機を、確かな技術と未1701mr-kume来志向のアイデアで乗り切り、現在に至ります。Tシャツの製造を先駆け、新しいファッション文化を広めると、日本有数のブランドやデザイナーからその品質を信認され、OEM(他社製品の製造請負)として発展しました。その後は、海外キャラクターのライセンスを取得し、自社生産した製品で新たな販路を開拓。さらにFAXが普及すると、ユニフォームやイベントアイテムとしての受注も始めました。現在は、異業種とのダブルネーム商品や、自社のブランディングを積極的に進めるなど、常に時代を先取りし、挑戦するものづくりへの姿勢があります。
中小企業のブランディング
中小企業ならではのものづくりのポイントは、「限定性」と「こだわり」と「ストーリー」です。その場所(時・人)でしか手にできないものを、こだわりをもってつくり、その物語を分かりやすく伝えます。言葉だけでなく、ワークショップを開催するなど、伝え方は工夫次第です。こうした独自のブランディングが浸透することで、リピーターとして足を運ぶ海外旅行者なども現れました。
サスティナブルなみらいへ   ものづくりの明日1701_tshirt すみだのものづくりを未来へつないでいくには、品質へのこだわりが重要です。長く使うほどに味わいが増す「機能品質」、オーガニックコットンなど天然素材を原料とするような「環境品質」、そして、カルチャーの継承を後押しする「文化品質」です。Tシャツはこれらの品質を描くキャンバスとなり、人々が織りなす多彩な伝統・文化や技を次世代へ届けます。
Lovin’g すみだ「すみだ」への想いは?
1701_collaboスミファ(すみだファクトリーめぐり)のガイドも務める 久米さんは、まさに「すみだものづくりアンバサダー」。
工房ショップやギャラリーが増え、活気づくすみだの産業は観光へと広がりをみせています。昨年も自転車で巡るファクトリーツアーで、中学生から大人まで幅広い世代を案内しました。街なかのガラス工房には、灼熱の坩堝(るつぼ)に向かう、寡黙な職人達の姿があります。そして彼らの手仕事による醤油差しは、一つとして同じものがないのです。こうしたものづくりの現場を体感できるツアーは大好評です。「すみだストリートジャズフェスティバル」も盛況です。開催7回を重ねるこのイベントの運営費は、寄付金や協賛金、飲食ブースとTシャツの売上げによるもので、久米繊維工業はこのプロジェクトTシャツの製作を担っています。有名なミュージシャンばかりが出演する従来のジャズフェスではなく、一人ひとりが楽しめる仕組みの市民参加型イベントだからこそ、10万の来場者を迎える、すみだを代表する音楽祭に成長しました。
取材:『みらい』編集チーム 松本

Interview 2  精巧株式会社  IKIJIプロジェクトマネージャー  近江 祥子さん

精巧株式会社
初代(祖父)が創業したのは1950年。戦後復興の中、生活必需品である肌着を製造しました。その後、経済成長を見据え、カットソー製造を開始します。高品質な商品の生産に対応し、大手ブランドのOEM製造も担います。
墨田区緑1丁目 http://www.seiko-co.co.jp
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高い技術力を活かした ファクトリーブランドの立上げ
1701_ikiji2 OEM製造で高い技術力を培ってきた精巧株式会社。2代目(近江誠 現社長)は仕事で訪問したイタリアで、ものづくりの会社が独自のブランドを立ち上げ、市場で認められているのを目の当たりにし、いつか自分もファクトリーブランドを持ちたいという想いを抱くように。そしてスカイツリー建設時、「すみだ地域ブランド」の前身となる委員会に参加する中で、すみだの素晴らしさを再認識し、すみだ発のファクトリーブランドを立ち上げたいという想いが強くなりました。課題は専門とするカットソーウェア以外の製造。そこで複数の優秀なメーカーが協力すれば、誰にも負けないブランドづくりができると考え、区内にある株式会社テルタデザインラボ(ニット)、株式会社二宮五郎商店(レザー)、ウィンスロップ株式会社(シャツ)とタッグを組み、2011年、江戸とすみだの伝統・文化をコンセプトとしたファッションブランドを立ち上げました。それがIKIJI(イキジ)です。
IKIJIと北斎が すみだと世界をつなぐ
立ち上げ当初から海外展開を視野にしたIKIJI。イタリアやフランスなどで開催する展示会で高く評価されるそのデザインには、すみだ生まれの天才絵師、葛飾北斎の作品が息づいています。世界的なアーティストが生まれ育ち、伝統と文化が息づく地域とIKIJIのデザインコンセプトを紹介すると、国境を超えた理解が生まれます。
1701_ikiji_hokusai下町の粋と心意気を伝える
江戸の昔から日用品を製造し、人々の生活を支える地、すみだ。生活様式が変わっても、職人たちの心意気は継承されています。これからもIKIJIを通して、下町の粋な文化やものづくりのまち「すみだ」を発信していきます。
Lovin’g すみだ「すみだ」への想いは?
以前はアクセサリー販売のお仕事をされていた近江さん。精巧に入社したのはIKIJIが立ち上がった頃。
住まいも区内ではありませんので、すみだについて勉強しようと思い、「フロンティアすみだ塾」やいろいろな集まりに参加すると、皆さんのすみだLOVEに驚きました。そしてその中で、長く住まれている方には当たり前になって気がつきにくい、すみだの良さがあるのではと思うようになりました。例えば、当社のある緑1丁目は、夏休みのラジオ体操を校庭ではなく公道でおこなっています。電柱には「ラジオ体操期間中の駐車はご遠慮ください」の貼り紙。こういった光景に、この地域ならではの強い結びつきを感じます。 近所でベーゴマを楽しむ粋なおじさん達を見て、両国のIKIJIストアでベーゴマ大会を開催したり、すみだの風物詩を撮影したいと思っています。 今後も「すみだのいいところ」をいろいろなかたちで発信していきたいです。
取材:『みらい』編集チーム 千